ゲーム業界に興味を持ち、働きたいと考える方も多いでしょう。
しかし、実際に働く際には多くの問題に直面することがあります。
ゲーム業界で働く人にとって、「やりがい搾取」と感じてしまう問題は深刻です。
この記事では、ゲーム業界で起こるやりがい搾取の問題の原因と改善策について解説します。
すでに業界で働いている方や、これからゲーム業界で働くことを考えている方にとって、非常に重要な問題です。
問題が起こるプロセスや対策を知り、ゲーム業界で生き生きと働ける環境を手に入れましょう。
いま働いている人も、知らず知らずのうちに「やりがい搾取」におちいっているかも。この記事を読んで、チェックしてください!
ゲーム業界のやりがい搾取とは?
ゲーム業界における「やりがい搾取」とはどのような状況を言うか、具体的な事例も交えて解説します。
やりがい搾取の定義と背景
やりがい搾取とは、従業員が「やりがい」を理由に低賃金や過酷な労働条件を受け入れてしまう状況を指します。
ゲーム業界では、深刻な問題になっています。
ゲーム開発者たちは、好きなゲームを仕事にでき、ゲーム制作にやりがいを感じています。
しかし、その「やりがい」が会社側によって利用され、満足いく報酬や労働条件が提供されないことが多々あります。
会社はプロジェクトを成功させるために、意図せずやりがい搾取環境を作ってしまうこともあります。注意が必要です。
ゲーム業界における「やりがい搾取」の具体的な事例
例えば、ゲーム会社で働く開発者たちの声を聞くと、次のような問題が浮かび上がります。
- 長時間労働が常態化している
- 休日出勤や深夜残業が頻繁に行われる
- プロジェクトの締め切りに追われ、心身ともに疲弊している
- 同年代より給料が低い
- 仕事をしても評価されない
これらの状況が続くことで、開発者たちは次第に仕事に対する意欲を失い、離職率が高くなる原因となっています。
また、心身共に疲弊してしまい、精神的な疾患を患う人も少なくありません。
精神的に辛くなり、ゲーム業界を離れるクリエイターをたくさん見てきました。とても悲しい状況です。
このような状態にならないためには、やりがい搾取に陥るプロセスを知ることが大切です。
つぎの項目で、やりがい搾取が発生するプロセスについて解説します。
やりがい搾取が発生するプロセス
ゲーム業界で、やりがい搾取が起こる理由は何でしょうか。
この理由を知ることで、自身がどのように行動すべきか判断できるようになります。
まずは、やりがい搾取が起こるプロセスを知りましょう。
- ゴールが明確でないゲーム開発
- 仕様変更を受け入れざるを得ない理由
- 限られた予算でのゲーム開発
- 少ない利益率で給料に反映されない
- 居心地の良い環境という思い込み
ゴールが明確でないゲーム開発
新しいゲームを開発は、手探りで行われることが多々あります。
事前に確認をしているにも関わらず、クライアントからのフィードバックで仕様変更が当たり前のように発生するものです。
また、新しいゲーム仕様やデザインデータ、プログラム実装などは試行錯誤に時間を使います。
ただでさえ時間がかかるゲーム開発ですが、多くの開発会社は決まったスケジュールと予算内で、できる限り仕様変更に対応しようとします。
そのため、開発者は残業をしたり、休日出勤しなければならない状況に追いやられるのが現状です。
このように、ゲーム開発は多くの時間がかかるため、完璧なスケジュール管理で開発が進行することがありません。
発注元の立場が上になりやすい。受注している会社は、多少無理してでも要望に応えようとしてしまうんですよね。。。
仕様変更を受け入れざるを得ない理由
全てのプロジェクトで必ずとは言えませんが、多くの中小ゲーム開発会社は仕様変更を受け入れざるを得ません。
なぜなら、クライアントと仕事をするとき、契約を交わします。
契約の中には納品物が「検収」された場合にお金を支払うという内容になっています。
つまり、クライアントの要望に応えられない場合、納品物として検収されない可能性があり、そうなると開発費が支払われないことにつながります。
最近は、公正取引委員会による下請法が施行され、無理な依頼は法律違反になります。
ただ、会社どうしのつながりや、次の仕事がもらえなくなる可能性を考えると、多少無理をしてでも仕様変更に応じる会社が多いのは事実です。
今後の会社経営を考えると仕方がない部分もありますが、そのしわ寄せが開発者に乗っかってしまう現状は問題が多いです。
しかも、現場の人が休みを削っても評価されないことがある。ディレクター、プロデューサーはしっかり評価してあげてほしいです。
限られた予算でのゲーム開発
昨今の国内ゲーム開発は、驚くほど予算が少ないのが現状です。
海外スタジオのようにAAA(トリプルエー)クラスなら100億円以上の予算にもなりえます。
しかし、日本国内で開発される中小レベルのゲームは、数千万円程度の予算ということが多くあります。
低予算で人員増加や経験豊富な人材を投入出来ず、少人数で一定規模のゲーム開発をしなければならない状況です。
そのため一人の作業量が多くなり、残業や休日出勤につながってしまいます。
いつもハイレベルなメンバーを集められることは無いため、1人の負担が増えてしまいます。
少ない利益率で給料に反映されない
ゲーム開発には人件費だけでなく、ソフトのライセンス料や会社の家賃、電気代など、とてもお金がかかります。
開発予算が何千万円あったとしても、残る利益は少ないのがほとんどです。
当然、利益率をしっかり確保できている会社もあります。そのような会社は、社長や上層部が会社同士で強いつながりを持っています。
多くの会社はプロジェクトを完了したとしても、大きな利益を残せず、働いている人の給料に還元できません。
そして次の仕事を得るために、追加予算など無理にお願いできないというジレンマに陥る状況です。
毎月ギリギリで自転車操業している・・・なんて会社も多いです。
居心地の良い環境という思い込み
いまゲーム業界で働いている人で、残業が多いのに給料が安いな・・・と思っている人がいるでしょう。
しかし、ゲーム開発を仕事にできている嬉しさと誇らしさもあり、残業や休日出勤があってもがんばれる。
就業時間が長いし、休みやお金はほしいけど我慢してしまうと言う人がいます。
ましてや、開発メンバーの仲が良ければ、よけいに我慢してしまうものです。
しかし、それが「やりがい搾取」の第一歩。
会社が望まなくても、自分からやりがい搾取の環境を作っていることがあります。
その思考が、他の人を長時間労働や低賃金に誘い込んでいる可能性があるので要注意です。
たとえ夢だったゲーム開発を仕事にできたとしても、適切な就業時間と給料のバランスは考えてください。
好きな仕事だからと言って、今の状況が適切かを評価しないのは、働く人の問題です。
一緒に働く人同士の仲が良いと、仕事がしやすいのは間違いない。ただ、就業条件は別問題なので、個人でしっかり判断しなければいけません。
やりがい搾取から脱却した成功事例
やりがい搾取を乗り越え、成功した人たちの実例を知ることで、読者にも希望を持ってもらいたいです。
ここで紹介する事例は、筆者の友人であるデザイナーの実例です。
3Dデザイナー(28歳、4年目)
3DCGのモーションデザイナーとして4年目の男性(筆者の友人)の話です。
- 前職での状況:
- 年収:300万円
- 勤務状況:残業が多く、休日出勤も頻繁
- 家族構成:妻と子供2人の4人家族
- 課題:家族4人を支えるには年収300万円では厳しく、長時間労働でワークライフバランスが崩壊
残業が多く、休日出勤も頻繁にありました。
家族との時間が取れないことから、奥様との関係もギクシャクしていたそうです。
そこで、働き慣れた職場でしたが、待遇を改善するために転職を決意したとのことです。
- 転職の決断:
- 5年目に他社へ転職を決意
- 働きながら転職活動を開始し、複数の企業と面接
働きながら転職活動をするのは大変だったと話していました。
デザイナーはポートフォリオが求められるため、資料作りに時間がかかったようです。
- 転職後の状況:
- 年収:300万円→400万円にアップ
- 勤務状況:残業や休日出勤が減少し、ワークライフバランスが改善
- 昇給:その後も定期的に昇給
ワークライフバランスも改善され、その後も昇給しているとのことです。
- 転職成功のポイント:
- スキルアップ:技術スキルはもちろん、積極的にコミュニケーション能力を高めた
- ポートフォリオの準備:身に着けた技術をアピールするため、自作モーションデータを多数準備していた
- キャリアコンサルタントの活用:転職エージェントを利用して、最適な企業を見つけた
この人のように、やりがい搾取から脱却することは可能です。
自分の状況を把握し、適切な行動を取ることで、より良い環境で働けるようになります。
実際にこのような年収アップは実現します。今の状況が普通と思わないことが大切です。
【まとめ】やりがい搾取は会社だけの問題ではない
- 会社の問題:ゲーム開発にはお金がかかる
- 会社の問題:利益が多く取れず給料に反映されにくい
- 働く人の問題:好きなことだからと言って、長時間労働を我慢する
- 働く人の問題:生活できるからと言ってお金のことを考えない
やりがい搾取は、働く人の思考からも起こりえるということは理解できたでしょうか。
もし「やりがい搾取」だと感じている人は、今一度、自分の働いている状況を冷静に見直してください。
次の項目で、どのような点に注目すればよいか解説します。
やりがい搾取にならないためのチェック項目
やりがい搾取の状況に身を置かないために、5つのポイントを教えます。
あなたが働いている状況と照らし合わせて、チェックしてみてください。
- 無理な就業時間で働いていないか
- 残業代は支払われているか
- 給料を時給換算してみて、納得いく金額か
- この先、そのままの給料で納得できるか
- 自分がいなくなっても開発は進むと考えられるか
無理な就業時間で働いていないか
ゲーム開発は常に納期が付きまとい、契約されたデータを確実に納品しなければいけません。
そのため、開発に遅れがあっても納期を守るためには残業や休日出勤をすることになります。
ただ、労働基準法にもあるように、基本的に週40時間労働(1日8時間)までが適切な範囲であり、それ以上の就業時間には残業手当を出さなければいけません。
自分が働いている時間が適切な範囲かどうかを、一度しっかり確認してください。
自分のスキルが足りないから長時間になっている。このような場合、スキルが足りない人に、無理な仕事をさせているマネージメントの問題です。
このような場合、自分のスキルが低いことを無理にかかえこまず、上司と話をしてください。
まずは自分が仕事をしている時間をしっかり把握することが大切です。
仕事のしやすさと就業条件は別問題。個人でしっかり判断しなければいけません。
残業代は支払われているか
大半のゲーム制作会社はフレックスタイム制度や裁量労働制を取ることで、働く人に就業時間の管理をまかせます。
裁量労働制とは(ここをクリック)
裁量労働制(さいりょうろうどうせい):働く時間を自分で決められる制度です。普通の仕事では、会社が決めた時間に出勤して退勤しますが、裁量労働制では、自分の判断で仕事の時間を調整できます。
この制度は、たとえば、デザイナーやプログラマー、研究者などの専門的な仕事やクリエイティブな仕事をする人たちに向いています。
- メリット:自由度が高いく自分のペースで仕事ができるので、効率が上がります
- デメリット:労働時間の把握が難しいく長時間働きすぎることもあるので、注意が必要です
フレックスタイム制度や裁量労働制を取る会社の場合、ほとんどが「みなし残業代」を含んだ給料形態です。
みなし残業とは(ここをクリック)
みなし残業(みなしざんぎょう):実際に働いた時間に関係なく、一定の残業時間分の給与をあらかじめ支払う制度です。
たとえば、毎月20時間分の残業代があらかじめ給与に含まれている場合、その月に実際に何時間残業したかに関わらず、20時間分の残業代が支払われます。
この制度は、特に残業時間が予測しにくい仕事や、忙しさが月によって変わる仕事に適しています。
会社は一定の残業代を先に払うことで、労働者は毎月安定した収入を得ることができます。
- メリット:給与計算が簡単なため、会社側も従業員側も、給与計算がシンプルになります
- デメリット:長時間労働のリスクと不正使用の可能性があります。一部の会社が労働者に対して過剰な残業を要求し、みなし残業代だけで済ませようとするケースがあります
みなし残業だからと言って、どれだけ働いても残業代が出ないという訳ではありません。
定められた時間以上の業務を行った場合、会社は追加で残業代の支払いをしなければいけません。
自分が働いている時間と会社の給料制度を照らし合わせ、時間外労働や休日出勤の見返りがあるか確認しましょう。
裁量労働制やみなし残業制度を取っている会社は、労働時間が曖昧になりやすい。会社の制度がどうなっているか、しっかりチェックしてください。
給料を時給換算し、納得いく金額か確認する
自分が働いている月間の時間を計算し、時給に換算してみてください。
その時給、納得いきますか?
「まだ経験が少ないから・・・」
「まだ制作に時間がかかるから・・・」
自分の給料が安いと感じたとき、安い理由を並べてしまうかもしれません。
しかし、あなたはお金をもらってゲーム制作をしているプロです。
仕事のレベルが低いから給料が安いんだと納得するのではなく、自分がプロとして稼ぐにはどれぐらいのお金を得るべきかを考えてください。
ゲーム制作会社で働く人は、一人一人がプロフェッショナルであるべきです。
自分の時給を把握し、どうすれば単価が高くできるかを常に考える思考をもってください。
働く人はプロ志向を持つべきです。自分の価値を高めるためにも、収入はしっかり把握しましょう。
この先、そのままの給料で納得できるか
やりがい搾取が発生するプロセスでも説明したように、利益率の高いゲーム開発はなかなかありません。
そのため、普通に働いている範囲では急激な給料アップは見込めず、毎年わずかな昇給にとどまる可能性があります。
昇給するには役職を獲得することが近道ですが、すぐに実現するのは難しいかもしれません。
そのような状況で、この先も今の給料や就業時間でやっていくか、しっかり考えてください。
さらに、自分が会社にとってどれほど重要な存在であるかも考えてみてください。次は、自分がいなくなった場合の開発プロセスについて考えてみます。
キャリアパスや昇給するにはどうしたらいいかについて、こちらの記事も読んでおいてくださいね。
自分がいなくなっても開発は進むと考えられるか
ゲーム開発は一人がこなす業務が多いため、ここで抜けたら他の人に迷惑になる・・・と考えがちです。
しかし実際は、あなたが抜けても仕事は進みます。
「自分が抜けたら迷惑がかかる」なんて考えなくても問題ありません。
その思考がある限り、やりがい搾取の状況を作ってしまう可能性が出てきます。
まずは、自分の人生を中心に考え、今の仕事はキャリアの途中であると考えられるようにしてください。
あなたは、自分が持っている技術を会社に売ってお金を儲けているプロであるという意識を持つことが重要です。
プロは安い仕事ばかり続けていてはいけません。常に技術向上は必要ですが、その分の対価がもらえているか、しっかり把握してください。
やりがい搾取と感じたら転職を考えてみて
やりがい搾取だと感じてしまうと、会社に対して不信感を持ってしまいます。
そんなときは、思い切って転職活動をするのも一つの手段です。
今までの経験を持って、新しい職場でキャリアを積み上げることも考えましょう。
同僚や上司と仲が良かった場合、なかなか転職に踏み出す勇気が出ないかもしれません。
それでも自分の人生を第一に考え、新しい職場でスタートを切ることも悪くは無いものです。
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コメント
コメント一覧 (2件)
ゲーム業界について熱く語れる人は希望があるか恵まれた人だけです。
私なんて精神的に叩きのめされました。
あの消火器事件の会社ですね。
因みに人気職種なので需要はあっても共有は少ないです。
スカウトは届くけど、個人情報収集と冷やかし目的だけです。
希望を持たせて業界にお金を落とさせるだけで、仕事なんてありません。
>あの消火器事件の会社ですね。
この会社出身の同僚が数名いますが、なかなかなあれな会社だと聞いています。。。
ある程度経験したら、他の会社へ行く人が多いみたいですね。気を付けないと、転職時も追跡されちゃうとか。
大手は夢と希望があるように見えますが、実際はドロドロしているところが多いようです。